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中心結節(小学生中学年で生えてくる歯の少し特殊な形)

先日9才の患者さんが来院しました。2日前から下の奥歯がズキズキ痛いとのことです。ぱっと見て歯に穴があるわけではなくいわゆるむし歯ではありません。でも症状は深いむし歯の時のような状態です。しかし歯の咬合面の中央に通常は見られない平らな部分とその真ん中にうっすら点状の模様があります。

下の歯の真ん中から数えて5番目の歯(一番奥の乳歯に代わって生えてくる永久歯、第二小臼歯)には咬合面中央に、時に先天的な突起がある歯があります。これを中心結節と言います。咬合面中央は本来溝の走るへこみ部分ですが、そこに突起状の形があるので、生えてきてかみ合うようになると対合歯とぶつかるようになります。そして多くの場合咬む力でその突起が折れてしまうのです。来院された患者さんの歯の形は中心結節が折れた断面が平らに見えていたのです。

皆さんは歯の中の構造はご存じでしょうか。一般には「神経」と言われますが、実際は空洞部分に血の通った生きた組織があって歯を内側からサポートしています。歯髄(組織)と言います。この空洞部分を歯髄腔と言い、この形は歯と相似形、つまり歯を小さくしたような形になっています。歯の形が出ているところは張り出してくぼんだ所はへこんでいるわけです。

中心結節があれば当然その内側には歯髄があり、内側で突起状になっています。ですから中心結節が折れると歯髄がむき出しになってしまい、形としては深いむし歯で歯髄が露出した状態と同様になります。これが断面にうっすら見えていた点状の模様です。すると歯髄には細菌が入り込んで感染を起こすことになり、歯髄は激しく痛みを発することになるのです。

通常感染した歯髄組織は回復は見込めないので、「抜髄」と言う、歯髄組織を丸々除去して歯の内側全体、根っこの先まで洗浄・消毒する処置を行います。そのうえで歯髄腔を充填して封鎖し細菌が入らないようにして歯冠の形を修復します。

ところが、歯は生えてくるころにはまだ根っこの形が完成しないままです。根の先ができておらず歯髄腔が根尖部で広がったようになっています。これが生えきってから歯質が作られ細く閉じるようになります。9才のその患者さんもX線写真でそのような状態でした。これでは歯髄腔の清掃、消毒、充填が難しくなります。

歯髄組織の治癒能力は通常、成人では感染に対してほぼ期待できませんが、若年者ではしばしば感染があっても生きた状態を保てる場合があります。そこでこの患者さんは「断髄」を試みました。歯髄の上の方だけ除去してそこに再生を促す薬剤を付けます。これが功を奏せば歯髄の下の方は生きた状態で維持され、未完成の歯根の形成も正常に進み、今後通常の歯に近い形で機能させていくことができます。

さてそこで見落としてはなりません。左右の反対側の歯はどうでしょう。この方は反対側はまだ乳歯があり永久歯は見えない状態でした。歯の形と言うのはほぼ左右で同様になるものですので、まだ生えていないおそらく中心結節のあるその歯こそ、今回のようにならないようにしなければなりません。歯が生え変わるころ合いによく注意して、生えてきてまだ歯が咬みあわないないうちに中心結節を保護しなければなりません。対策としては、結節の突起周りを詰め物でカバーして折れないようにするなどです。

中心結節の発生は頻繁とまでは言えませんが、我々にとっては時々見かけるといった決して珍しいものではありません。歯が生えてくる様子はいろんな面で注視する必要があるのです。その意味でも定期的な歯科における観察は大切なのです。