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歯を抜かっちゃ、削らっちゃ

先日右上の歯の根管治療(根っこの消毒)をしている方が予定通り来院されました。

見てみると歯肉に腫れがあり、穴が開いて少し膿が出ていました。痛みはないそうです。今治療中の歯が原因なのか、それとも隣の歯に由来するものなのか、それを調べるために「ゾンデ診」を行いました。開いた穴から細長いものを挿入し行きつく先の場所を探りました。レントゲン写真を撮影して見てみると、やはり隣の歯の方向にゾンデが向いていました。

Doctor「隣の歯も今の歯と同じように消毒の治療が必要ですね。」

Patient「あら、そうなのね。」

D「やっぱりレントゲンは撮ってみるものなんですよ。目で見ただけではわからないのが歯の病気ですからね。」

P「隣の歯も治療するんですね?」

D「そうですね。でもそれはご自身で治療したいと思われたらですね。」

P「病気になってるんでしょ?」

D「そうです。隣の歯も根の周りに膿がたまって腫れているので、歯由来の病気ですけど顎の骨まで病気が広がっているわけです。」

P「えー・・・、じゃあ治療しなくっちゃ。」

D「今やっている治療も同じですよ。」

P「え、そうなんですか。」

D「ご説明もしたと思いますけど、なかなか詳細を覚えてはいませんよね。」

P「そうなんだ・・・。」

D「無理ない事とは思うのですが、でも治療は自分のために自分で取り組むのが本来ですよね。」

P「それはそうですねぇ。」

D「なので、大まかにでも病状も分かっていただいて、だからどういう治療が必要か、今どんなことをやっているのかぐらいは治療に際してなんとなくでもご自身で理解していてほしいのです。」

P「そうですねぇ。」

D「じゃないと、逆に今何をやっているのかわからないと治療が人ごとになってしまいませんか?」

P「よくわからないまま治療していました。」

D「そうすると、なんか痛いから、悪いと言われたから治療する、となってしまって、自分主体で取り組むことにならないですね。自分のためにやっているはずなのに。」

P「あら、そうですね。」

D「そうすると自分で自分のために治療しているはずなのに、多くの人が歯の治療について、歯を削らっちゃ、って言ってませんか。」

P「ほんとだわ(笑)。」

D「歯を抜かっちゃ、って人もいますよね?」

P「あら確かに。ほんとは違いますね。」

D「歯の病気は元に戻せないので、いよいよこの歯は抜くのがあなたにとってベスト、抜くしかないと思って私たちは抜きましょうというんですけど、多くの人はその時、抜くんですか?って言うんです。」

P「それはそうですねー。」

D「我々は歯を抜きたくて抜きましょうなんて言うことは一切ないのに、ご自分で抜くことがベストだと理解してほしいのに、そういう発想になかなかなれないんですよね。」

P「やっぱり抜くって言われたらびっくりというか嫌だなって思います。」

D「ですよね。」

P「でも抜かないでもっと困るのも自分ですしね。」

D「そうですけど、でも患者さんが抜きたくないと思ったら我々はひとの歯を勝手に抜くことはできないし、ご本人が納得しないで抜くことがいい事だとも思っていませんし。」

P「でも抜くしかないなら抜くんでしょ?」

D「そうですが、我々は先々までを考えて判断をしているので、例えば今すぐではなくても、いったん症状を抑えてしばらくは現状維持を図る延命治療があってもいいかもしれません。ご本人の希望がもしそうなら。」

P「そういうこともできるならいいですね。」

D「とにかく、いろいろ相談しながら治療を進めていかないとほんとの治療とは言えないんじゃないかと思います。患者さんが自分で治療に取り組む意識があって、その後の健康につなげていけると思うからです。勝手に自分の体に何かをされるのは本来の治療ではないですから。とにかく何かあったらいつでも遠慮なく言ってくださいね。」

多少言い回しが違うところはあると思いますが話の筋はこの通りです。

※「~された」を方言で「~さっちゃ」と言います。