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ホワイトニングって言うけれど・・・。

ホワイトニングという言葉はほとんどの方がご存じでしょう。しかし、その言葉の意味するところは使う状況や人によってだいぶ違うことがあります。

 

ホワイトニングWhiteningはそもそも、White(白い)、Whiten(白くする)、Whitening(白くすること)という言葉です。歯を白くすること、という意味では間違いはないのですが、歯科治療上使う言葉としては問題があります。

 

歯科医療でのホワイトニングとは、薬剤を作用させて歯自体の色を漂白(Breaching)することを言います。漂白剤を作用させる方法には大きく分けると3種類あります。一つ目は無髄歯に行うもの。むし歯などで歯髄を除去してしまった歯(無髄歯)はある意味死んでしまっているので多くの場合変色してきます。これを歯の内側に漂白剤を入れることで歯自体の色味を白くします。歯の変色は内側の層である「象牙質」に起こるので、効果も直接的に出せます。しかし、近年は無髄歯に対しては基本的にクラウン補綴(被せ物)を施すので、被せ物が白くきれいであれば漂白する必要が無くなります。

 

有髄歯をホワイトニングする場合には二通りの方法があります。有髄歯は血の通った歯髄があるので、直接薬剤を歯の内側には適用できません。漂白剤ですのでかなりの刺激、傷害性があり、歯の外側に使う際には注意が必要になります。薬剤を歯の外側に保持する方法によってやり方が大別されます。これはそれぞれ「オフィス」ホワイトニングと「ホーム」ホワイトニングと呼ばれます。

 

オフィスホワイトニングはクリニックで白くしてしまう方法です。装置を口にはめ唇などまわりの部分を歯から離して、歯肉もコーティング剤を塗って遮断し、漂白剤が周りの組織を傷害しないようにします。そのうえで歯に強い薬剤を塗布し、象牙質に浸透した薬剤の反応性を高め、施術時間を短縮するためブルーライトを照射します。しかし、その場で白くするために反応を高めることは歯へのダメージにもつながり、それに伴う白さのくすみ(透明性の低下)、しみる症状などが懸念されます。まとめると、かかる時間は短いけれどやや不自然な白さ、歯の質の低下、しみるなどの副作用が出やすい方法と言えます。

 

ホームホワイトニングはまさにそのまま、お家で歯を白くする方法です。そのためにまず歯型を取って歯に適合するトレーを作ります。そこに弱めの薬剤を少量注入して歯にはめると薬剤が歯の表面を覆うように広がってくれます。その状態を一日数時間保つようにします。これを1週間から10日ほど(7回~10回)行えば多くの場合効果が得られます。これは毎日やらなくても良く、やったらやっただけ効果が得られるという融通の利く方法です。またマイルドに反応させることになるので効果も安定して得られ、歯のダメージもあまりありません。そのため自然な白さが得られます。時間と手間はややかかりますが費用はさほどかからず、本来の目的である健康を損なわず歯を自然な白さにするためには適していると言えるでしょう。健康面が一番大事だという考えから当院ではホームホワイトニングだけを実施しています。

 

ここまでがいわゆる「本来の」ホワイトニングについてのご説明でした。では巷のホワイトニングとはなんでしょう。

 

そのほとんどが歯の「清掃Cleaning」です。歯の表面に付着した茶渋の類をペーストなどを使って物理的に落とすことをホワイトニングと言っています。茶色い茶渋を落とせば、元々の歯は白いので「白くした(Whitening)」と言っても嘘ではないでしょう。でも歯自体の色は変わりません。最近は清掃性が良いものも中にはありますので、一定程度推奨される面もありますが、ホワイトニングをうたうには歯科医療という観点では無理があるでしょう。「嘘ではない」のですが・・・。どうでしょう、使用されますか?

 

また、ホワイトニングサロンなるものもありますね。これは歯科医師がいない施設でホワイトニングを提供しているものです。無資格者がホワイトニングの施術はできない(危険ですから)ので、物は提供しますので自分でやってくださいね、ってことです。これの問題点は、一定程度危険な薬剤を自分で扱うこと、ホワイトニングトレーがちゃんと合わないものになり効果が不安定(色ムラになるなど)になりやすい、そもそも使う薬剤や衛生環境などが信頼できるか、副作用が出た時に対応不可能などが挙げられます。どうでしょう、利用されますか?

 

さらに近年多いと感じるのは、前述のクラウン補綴で白くすることまでホワイトニングと呼んでしまっていることです。歯が白くなるんじゃなくて白いものをかぶせる。白くなるのは当たり前でしょ! しかも歯を削ってしまうとすれば、それはもはや歯ではないですね。

 

そして何より、以前より歯が黄ばんでいるとしたらそれはなぜなのか。そうなった原因があるはずです。それを解決せずに色だけを無理やり白くしても、すぐまた色が変わって、さらには歯をダメにすることが容易に想像つくでしょう。問題があればまずは原因を解決することこそ大事ですよね。原因を解明できるのは歯科医院で、だけでしょう。

 

歯の見た目はそれも大事な歯の機能の一つです。ぜひ皆さんに綺麗な歯でいてほしいと思います。しかし綺麗な見た目は健康による裏打ちがあって初めて成り立つものです。人工物で歯をきれいにする方法もありますが、あまりにも真っ白だったりすると我々からすれば見た目に違和感が強く見て気持ちいい感じはしません。中身がわかっているからです。自己満足の世界でもありますからどういう選択をするかは人それぞれ自由です。しかし忘れてならないのは長期的に困らないようにできるのか、そこを「考える」ことでしょう。考えたうえでならば問題が起きても自分で納得理解ができるでしょうが、考えないで問題が起きたら、何でこうなっちゃったの?ということになり、後悔が生まれるのではないでしょうか。